200名を超えるff俱楽部会員が、心身の状態が変化していく将来を見すえた住まいの選択という話題に、熱心に耳を傾けました(撮影:岸隆子)
婦人公論ff俱楽部オープン記念トークイベントの第2部ではスペシャルセミナーを開催。エッセイストの岸本葉子さんと、有料老人ホーム「エデンの園」を運営する社会福祉法人 聖隷福祉事業団理事の平川健二さんが、高齢期に向かうなかでの住まい選びについて語り合いました(撮影=岸隆子)

《家の出どき》を考えて

岸本葉子さんは、かつて高齢のお父様を在宅介護した経験を持っています。介護の始まりが急だったため、本人の意思を確認することもできないまま、岸本さんが用意したマンションにお父様を呼び寄せたそう。

しかし、緊急時の呼び出しなどの設備を使いこなせず、「80代半ばの住み替えは遅すぎた」と振り返ります。

そんな経験をふまえ、自身はいずれ高齢者向けの施設に入るつもりでいるけれど、その時期を探っているという岸本さん。すると、平川健二さんは次のようにアドバイスします。

「要介護になったら老後の住まいへ、と考える方が多いのですが、その際は家や家財道具の整理に加えて、さまざまな契約も生じるため、相当な気力と体力が必要です。ですから、定年退職前後の60代から70代前半のお元気なうちに行動するのが、理想だと思います」

この言葉を聞いた岸本さんは、「たしかに《入りどき》ばかり気にして《家の出どき》は考えていなかった」とハッとした様子です。

さらに平川さんから、高齢者向けの施設には要介護になってからではなく、元気なうちに入居し、自分の家として生活を送る「自立型有料老人ホーム」があるという説明がありました。

その一例として「エデンの園」では将来、病気や要介護になっても同じ施設内でケアが受けられるだけでなく、看取り、共同墓苑など、終の棲家としての手厚いサポートが用意されているとのお話も。