木村 ただ、日本は生まれてくる子どもの97%が婚内子ですから、先進国としては婚姻制度が崩壊していない珍しい国でしょうね。ヨーロッパだと約4割が婚外子です。

酒井 欧米で制度が崩壊しつつあるのは、婚姻が面倒だから?

木村 そうだと思います。日本で婚姻制度の利用率が高いのは、端的に言えば使いやすいからなんですよ。たとえば裁判所を通さないと離婚できない仕組みの場合、互いに弁護士費用が100万円単位でかかってしまう。

それに比べれば日本の離婚は簡単なほうだし、争うことがなければ紙1枚で済む。結婚も離婚も紙1枚で済んで、届に不備がなければ本人でなく代理人が提出してもいい。相続権などの権利も得られる。かなり便利に作られているとは思いますね。

酒井 日本での「結婚」は面倒だとずっと思ってきました。でも面倒に感じていたのは、結婚によって社会的に課される柵(しがらみ)に対してなのかもしれませんね。世界と比べると日本の結婚は意外にもライト。

木村 民法752条に「夫婦は同居し」と同居義務規定がありますが、別に同居しなくたって誰にも叱られませんしね。

では日本の制度で外せないのは何かというと、夫婦の「同氏」。つまり戸籍上の姓が同一であることが求められる点くらいなんです。

 

中編につづく

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