ひとつは宗教の違いです。私は落語家であると同時に、天台宗の僧侶になることを目指していました。一方、夫は29歳のときにプロテスタント教会の洗礼を受けていて。「仏教徒とクリスチャンが結婚するなんてありえない!」と、周りからかなり反対されたのです。

でも、私たち自身は、それぞれの親を敬うように、お互いが信じる仏様や神様を敬い合えばいいよね、と話していたのですんなり解決できました。

もうひとつのハードルは「姓」を変えることです。この問題はなかなか結論が出なかった。私は中学生の頃から、結婚したらどちらかが姓を変えないといけないということに疑問を抱いていたのです。

同級生の女の子は好きな男の子の話をするときに、「私、田中君と結婚したら田中由美子になるんだわ~」なんてうっとり。そういう話を聞くたびに、「なんで名字を合わせなきゃいけないの?」って。

しかも、たいてい女性が男性の姓を名乗る。それって、自分が相手に吸収されていくように感じて違和感がありました。企業同士の吸収合併も、表向きは対等と言いながら、吸収されるほうの力が薄れていくでしょう。

だから、姓を揃えたら人によっては力関係ができる気がしたんです。とはいえ、夫婦別姓は法的に認められていない。そこで、夫の姓の「井村」にするか、私の本名である「鳴海」にするか、2人で話し合うことにしたのです。