苦渋の選択で夫の姓にしたけれど
幸い、夫は男女差別の意識がまったくない人です。彼は、お母さんが看護師として忙しく働いていたので、鉄道整備士だったお父さんも家事を分担する家庭に育ちました。そのためか、「男だから、女だから」という固定観念がありません。
そんな彼は、私の気持ちを理解して、「僕が鳴海になりましょうか」と言ってくれたのです。でも私は、自分の姓を変えたくないのと同様に、夫に「私の姓に変えて」とお願いしたくもない。いったいどうしたものかと、2人で頭を抱えてしまいました。
最終的に夫の姓に決めたのは、彼の家族の事情を考えてのことです。夫のお兄さんは31歳のときに事故で亡くなっていて。
直接関係あることではないけれど、ただでさえ大事な息子を失うというつらい経験をした義父母にとって、次男が井村の姓でなくなることが、なんだか追い討ちをかけるようで酷なのではないかと思ったのです。
それに孫ができたとき、その姓が「井村」だったら嬉しいかもしれない。そんなふうに考えて、私が彼の姓にすることに決めました。