下請け的な気分の蔓延

ここでは、次のような理由があげられる。

『没落官僚-国家公務員志願者がゼロになる日』 (著:中野雅至/中公新書ラクレ)

まず、労働環境が悪化したことだ。ブラック霞が関と呼ばれるような長時間労働は、今以てまったく是正される気配がない。

二つ目は仕事の中身と質だ。官邸主導システムを導入した結果、政策の企画立案・調整・執行という政策形成過程の三段階で、官僚が果たす役割は大きく変化した。

特に、政策の企画立案という知的業務が官邸に独占される一方で、無味乾燥な根回しや調整だけが各省に投げられる状況がある。

三つ目は、未知の仕事が増える中で、官僚が適応できなくなっていることだ。エリートだとは言うものの、デジタル化への対応など官僚がこなせない仕事が増えているし、外郭団体が少なくなったことで民間企業に頼らざるを得ない構造も浮き彫りになりつつある。

それだけではない。実は、官僚がいまだ政策の主導権は握っていたとしても、有効な政策をひねり出せるかどうかは疑問だ。

この三つが相まって、主体的に仕事をするというよりも、誰かにやらされているという下請け的な気分が蔓延している。

三つそれぞれ単独なら問題はないのだ。いくら労働条件が悪くても、仕事は自分たち官僚が主導していると思えれば、いくらでもやる気は出てくる。しかし三つが同時に起こっていて、とてつもなくネガティブな相乗効果を生み出している。

それだけではない。官僚がやる気を失い、各省が制御不能状態に陥りつつあって、政府が機能不全を起こし始めているのではないか。これが著者が提示する仮説である。