「五つの人事慣行」の崩壊

労働条件が悪すぎる。とにかく拘束時間が長い。

ブラック霞が関を象徴する国会待機などはもはや誰もが知るようになった。労働時間を減らす地道な取り組みは行われてはいるものの、基本的な構造は変わっていない。それどころか、コロナ禍では常軌を逸した「殺人的」とも表現していいような長時間労働が露呈した。

ただし、霞が関の長時間労働はもはや伝統行事の域と言っても過言ではなく、かつては長時間労働であってもモチベーションは低下しなかった。

人事労務管理の環境が大きく変化したことのほうが影響は大きい。一言で言えば、キャリア官僚のプライドを大きく傷つけ、モチベーションを低下させる変化が起こったのだ。

その象徴は、以下に掲げる五つの人事慣行が崩壊しつつあることだ。

(1)同期横並びで本省課長クラスまでは昇進できる。

(2)後輩が先輩を追い抜くことはない(年次による出世)。

(3)ある程度の規則性を持っていて予測可能な昇進レース。

(4)降格などの不利益処分はなされない。

(5)斡旋によって天下りが保証される。

例えば、天下り抑止のために勧奨退職がなくなった結果、官僚の多くは定年間際まで働くようになったが、そうなると当然のことながら、管理職や幹部職員の年齢が上昇する。幹部ポストが増えるわけでもないとなると、昇任するまでの勤務年数が従来よりも長くなる。

エリートの証(あかし)であり、モチベーションとなっているのは、短期間でのスピード出世であることを考えると、やる気をなくす官僚が増えるのは当たり前である。