江原 なぜ変わったのですか?

圓尾 日本の食材を扱ったイベントで鰹節の問屋さんと知り合いまして、伝統食材である鰹節が、昔とは味が変わってきてしまっているという話を聞いたのです。鰹の釣り方や鰹節の作り方が昔と違うためだそうです。ところがその違いがわかる人がどんどん減っていることも知り、和食の根底を支えているだしの味が変われば、和食そのものが変わってしまうと気づいたのです。

と同時に、ほかの食材はどうなのだろうか、野菜や調味料などはどこでどうやって作られ、運ばれて、自分たちの口に入るのかと疑問を持ちました。調べるうちに、農薬や化学肥料を使った野菜と、それらを使わずに雑草を1本、1本抜いて丁寧に育てた野菜とでは、栄養価も、味も違うことがわかったのです。

江原 実際に調べてわかった、と。

圓尾 ええ。今まで栄養素として考えていたけれど、食べ物として見ることも大事だという視点が持てました。そこからいろいろな食の疑問にも目が向くようになったのです。

 

「基準」はあてにならない。大事なのは責任主体

江原 圓尾さんはイギリスに約1年留学なさっていたようですね。日本と海外を比較して感じることは何かありますか?

圓尾 今話題になっているトランス脂肪酸の扱いはかなり違います。

江原 「食べるプラスティック」と言われているものですね。

圓尾 「狂った油」などとも言われます。マーガリンや菓子パンなどに多く含まれていて、アメリカでは体に良くない影響があるとして実質的に使用禁止。シンガポールやタイでも規制が始まっています。

江原 日本は……。

圓尾 規制がない状況です。

江原 どうしてなのでしょうね。

圓尾 日本人はそれらの国に比べて、さほど油をたくさん摂らないからというのが理由のようです。少ししか摂らないなら、ちょっとくらい悪くても問題ないだろうと。

江原 う~ん、よくわからないですね。若い子たちは、けっこう食べていますよ、菓子パン。そう思うと、ヘンな理由ですね。そもそも「基準」というのはあてにならないと、私は思います。原発事故後、放射線の年間被曝線量基準が引き上げられるという事態が起こりましたしね。

その時私が思ったのは、情報を鵜みにせず自分で勉強すること。そして自分の許容ラインはここまでだという線引きを自らがする「責任主体」が大事だということです。それは食に関しても同じだと思います。