男は愚かで女は美しい

俊夫はあろうことか、佐和子の担当編集者と不倫をしてしまいます。しかも、彼には主体性がなく、巻き込まれるようにいつのまにか……これ、一番よくないですね。自覚無き不倫(笑)。本当にダメな男だと思います。

でも、監督は最初の打ち合わせの際、「ダメな面がある俊夫だけど、悪者にはしたくない」とおっしゃった。「どこか憎めない人物にしたい」と。彼を演じるうえで、そのギリギリのラインを意識していました。

売れっ子漫画家時代の俊夫が一瞬だけ出てくるんですが、どんな外見にするかをヘアメイクさんと相談しました。今の俊夫はぼさぼさ頭で無精ひげだけど、過去の俊夫はどういう顔をしていたんだろうと考えながら、いろいろ試してみて「これだ」と決まった時に、自分の中で俊夫像が定まった気がします。

一方、俊夫の不倫に気がついた佐和子は、なんと自分たちと同じ状況の夫婦の漫画を描き始めるんです。しかも、物語の中の妻は、若い男と恋愛関係に……。それを盗み見た俊夫は、不倫がばれているかもしれない恐怖と、妻の裏切りへの疑念で精神的に追い詰められていきます。どこからが現実でどこからが創作なのか、右往左往する俊夫の姿をご覧ください。

一方、佐和子の潔さ、確信を持って突き進むかっこよさも感じていただけると思います。そういうかっこよさって、女性はみんな持っているものなんじゃないでしょうか。僕は基本的に、「男は愚か。女は美しい」と思っていて。バカみたいなこと言ってますね(笑)。でも僕は、本当に根っこからそう信じているんですよ。