野球をやることと髪型、なんの関係があるのだ

この日はなんてことない野球の話がコロコロ転がった末に、
「なんでなん!?言うてみぃ!」
夕食の最中突然、坊主にしない瑛介を問い詰めだした。

(学校の友達の目が気になるからに決まってるじゃん)

瑛介の正解をすでに察している母。しかしわたしが言い返してしまうと余計怒りの炎に石炭をくべてしまう。もうわたしの目には…

ポッポーーーっ!!

頭から煙を吐いて怒る蒸気機関車にしか見えない夫(トーマスほど可愛くはない)。

「今日のお肉美味しいから」
「ほれ、このキムチもお食べ」
「なぁんだそっかー、✖✖君も同じ班だったんだあ!」と何の関係もない話題をぶっ込んで食卓の空気を変えようと躍起になる母・いずみ。

て、
ところでわたしは一体何に気を遣っているのか?

そもそも野球をやるのに長髪だの坊主だの、なんの関係があるというのだ。

瑛介が髪を切らない限りずっと続きそうなこのモヤモヤを、わたしはここしばらくずぅぅっと抱えていた。

最近にわかに「反抗期」に突入したらしい態度を見せ始めている瑛介は、父が厳しい言葉で叱っている時は何も言い返さないが、さんざん父に叱られたあとクルッと反対側を向いて
「…チッ」
ひっ!?その舌打ち、どうか夫の耳に届きませんように!
わたしにも時々反抗的だが、兄も刃向かったことのない父親とは一触即発の毎日。顔そっくりやのに。なぜだ!?

何とまあクリクリ坊主!声も高く、色白なのは父譲り。

話は逸れるが我が家にある大量のスニーカー、ほんの少し置き場所がズレていたり一足でもなくなっていたら間違いなく気づく男、それがウチの夫である。恐るべし。
だから大雑把なわたしなど隠し事をしたところで、夫に見つからない自信は全く、ない。

そんな父親が、息子のわずかな反抗的態度を見逃すわけがない。