うつ病と診断されて

当時の私には、元夫の言葉に言い返す気力がなかった。精神疾患者への偏見など、とうの昔に慣れていた。元夫の言葉に従い、高速道路を使って片道2時間ほどの病院を受診した。担当主治医は女性で、ハキハキとした物言いの方だった。数枚にも及ぶ問診票に記入し、およそ1時間の初診を終えて、私はうつ病と診断された。

元夫との間にあったことを主治医に告げた際、「旦那さんの発言・行動は明らかにDVです」と明言された。この時、診断書を取っておくべきだった。離婚の際、何度そう悔やんで歯噛みしたかしれない。

配偶者のDVやモラハラで心身の調子を崩した場合、病院を受診して診断書を取得することが、のちの自分や子どもたちを守ることにつながる。とはいえ、つらい時は何をするにも億劫になるし、判断力も鈍くなる。だからこそ、只中にいる人が適切な支援につながれる体制づくりが必要なのだ。

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私は、元夫との夫婦関係の再構築を望んでいた。息子にとっても、それが最善の道だと信じていた。通院をはじめたのもそのためで、根本の原因に向き合わなければ、回復は望めないと思った。しかし、元夫は、私が精神科に通院することを当てつけに感じたようだった。

「一緒にいるせいで病気になるような人間とは、やっぱり離婚したほうがいいのかもね」

投げやりにそう言って別室に引きこもる元夫の背中に、私はなんと声をかければよかったのだろう。怒りをぶつければよかったのか、淡々と説き伏せればよかったのか、今でもわからない。ただ、この時はおそらく何を言っても無駄だったろうと思う。自分が聞きたくない言葉は、すべてシャットアウトする。私の“感じかた”のせいにする。そういう人だった。