法曹界の希望の光に

「先生は何も分かっていらっしゃらない」

もっとも、すべて穂高の芝居に違いない。この時点まで寅子は「謙虚になった」「大人しくなった」と言われていた。それでは寅子ではなくなってしまうと考えたのだろう。

穂高の真意の一端が明らかになったのは第56回(1949年)。寅子に対し東京家裁判事補の辞令を渡される直前、最高裁判所人事課長の桂場等一郎(松山ケンイチ)と最高裁長官・星朋彦(平田満)の間で、こんなやり取りがあった。

「長官、彼女が例の・・・」

「穂高先生の希望の光だね」

寅子は何のことやら分からず、ポカンとしていた。穂高は寅子が法曹界を変えると信じている。光なのだ。

文責◎高堀冬彦(放送コラムニスト)