よねの本当の気持ち
よねは寅子の結婚や妊娠に腹を立てているわけではないだろう。よねは父親に売り飛ばされそうになった過去があり、天涯孤独の身だった。やっと寅子という同志が出来たと思ったら、自分は妊娠について相談されなかった。ショックを受けたのだ。
それは第60回(1949年)にはっきりした。よねは自分と寅子の関係を「ほんの一時、重なったこともあったが、所詮あたしたちは歩いている道が違う」と言い放つ。さらに「いつ、いなくなるか分からん奴の言葉は届かない」とも言った。
傷ついた寅子が去ったあと、2人の会話を陰で聞いていた轟が「やっとお前の気持ちを理解した」と言う。そして、こう続けた。
「佐田が去ったとき、おまえは心の底から傷ついた。だから怖いんだな、また関わるのが」
家族のいないよねは心を許した友人との別れを恐れている。