新たな幸福を目指して

もっとも、梅子は悲しまず、それどころか高笑いを浮かべ、大庭家から去って行く。「ごきげんよう!」。相続権も放棄し、家から出て行った。

どうして梅子は強くなれたのか。それは同じ第64回の寅子によるラジオでのスピーチを聴いたことが背景にある。女性向け情報番組に出演した寅子は「私はご婦人方をかよわいとは思っていません」と力を込めたあと、憲法と民法の改正によって女性の境遇は変わったと説いた。

「やっと戦うことが出来る、報われる、誰かの犠牲にならずに済むようになった。女性たちが自ら幸せを掴み取ってほしいと思います」

梅子は自分も新たな幸福を掴み取らなくてはならないと考えたのだ。