巻き込むのを避けたい

汐見は最高裁判所家庭局長の多岐川幸四郎(滝藤賢一)に連れられて、轟法律事務所を訪れた。やはり明律大の同級生である弁護士・轟太一(戸塚純貴)、助手・山田よね(土居志央梨)がやっている。戦災孤児たちの拠り所だった。

汐見はよねと会うなり、「よねさん、あなたが・・・」と声を上げた。よねは「あん?」と相変わらず無愛想だったが、汐見はうれしそうだった。香淑が明律大時代を美しい思い出として汐見に語っているからにほかならない。寅子たちを嫌っているわけではないのだ。

では、どうして寅子たちを遠ざけようとしているのか。世間には朝鮮人への偏見があるからだ。それについては第54回(1948年)に多岐川がこう口にしている。

香淑について寅子が多岐川に対し、「私に出来ることはないのでしょうか?」と問うたところ、多岐川は「この国にしみついている香子ちゃんに対する偏見を佐田くんに糺す力はあるのか!」と一蹴した。簡単な話ではないのである。

朝鮮人と近しい日本人も偏見の目を向けられたという現実がある。悲しいことだが、香淑は寅子らまで自分の苦境に巻き込むのを避けたいのではないか。

もっとも、この朝ドラのテーマは男女差別や民族差別、貧富の差による差別などを禁じた憲法第14条の「法の下の平等」だ。このままで終わるはずがない。