一筋縄ではいかない穂高重親
寅子の恩師で明律大教授の穂高重親(小林薫)は複雑極まりない。なにしろ腰痛の仮病まで使う人なのだから、一筋縄ではいかない。しかし、その本質がようやく見えてきた。先々のことを見据え、憎まれ役を買って出ている。
寅子が妊娠を隠して弁護士活動を続け、倒れてしまった直後の第39回(1942年)も憎まれた。穂高は寅子の勤務先だった雲野法律事務所に妊娠を明かし、寅子を半ば強引に辞職させてしまったのだから。
しかし、穂高は「弁護士の資格は持っているのだから、仕事への復帰はいつだってできる」と説くことも忘れなかった。穂高は女性が出産と育児を終えた後も、希望するなら働くべきだと考えていたのだ。
第49回(1947年)と同50回(同)での穂高はもっと強引だった。司法省入りしていた寅子に対し、家庭教師に転職することを勧める。
「この道に君を引きずり込み、不幸にしてしまったのは私だ」
寅子は憤怒する。当然だ。