「ある国の文化と日本の文化が一緒になると、そこで生みだされるのはその国のものでも日本でもない、まったく新しいものになる」

ALTでは赴任したい県を選べるので、迷わず富山を希望。地元の小中学校でALTとして働きながら、2~3年後からは『怪談』で一緒に活動したメンバーと作品を作るようにもなりました。

最初は、人形劇をやりたいと思っていたんです。でも当時僕が住んでいた小さいアパートでは、人形を作るのも、メンバーを集めて練習するのも無理。そこで思い出したのが、アトランタの舞台でもときどき演じていた影絵でした。

影絵なら小さな机ひとつあれば作れるし、OHPを使えば小さな壁でも映せるから、6畳ひと間のアパートでもリハーサルまでできる。「これはいいじゃないか」と気がついたのです。

ALTの仕事は、影絵師としての活動が本格化するまで7年間続けました。その後、共通の知人であるミュージシャンのライブを手伝った縁で日本人の奥さんと知り合って11年に結婚。2人の娘に恵まれ、アトリエを兼ねた自宅も富山市に構えました。影絵一本で生活できるようになるのが目標ですが、今も大学で授業を受け持ったり英会話を教えたりといった仕事は続けています。

英語は、僕にとって一つの個性であり力だと思う。学校公演では、ジョージア州の昔話を使った作品や、日本の昔話『おむすびころりん』の舞台をアメリカに移して『オー! ノー! マイミートボール!』(笑)といった作品で、英単語をいっぱい使って英会話のレッスンになるような工夫をしています。

またアメリカ人の僕からみた、日本の昔話の面白さや、違ったアプローチからの解釈を伝えるといった仕事も続けていきたいですね。今年(2019年)8月には富山で新作『浦島太郎』を発表しました。

奥さんには絵コンテの段階からみてもらって、「こんな小道具を出したいけど、浦島太郎の時代にあるかな」「この頃のお墓ってどんな形?」と質問攻めにするので、彼女は今、すっかり浦島太郎のお話に飽きてしまっているみたい(笑)。

お話としては、もし浦島太郎が玉手箱を開けなかったら、おじいさんになってから乙姫様に会いに行ったら──などのいろんなバリエーションを考え、どうしたらお客さんが楽しんでくれるか、試行錯誤しているところです。

前作で琵琶や箏と共演しましたが、今度の『浦島太郎』はそのコラボレーションの続きになります。ある国の文化と日本の文化が一緒になると、そこで生みだされるのはその国のものでも日本でもない、まったく新しいものになる。そうした誰もみたことのない新しい影絵の世界を、僕はこれからも追い求めていきたいと思っています。