映画「アディクトを待ちながら」ポスター
映画「アディクトを待ちながら」ポスター

挨拶でスベッたわたし

お客さんたちは、上映後1人も席をたたず我々の話を聞いてくれた。
なんというか、とても真剣に。
わたしはこの日、客席で映画を観たのだが、息をのんだり、すすり泣きをしたりする客席の集中をすでに感じていた。

わたしが挨拶をする番になり

「美容院に出てくる保険屋さんの役で、週刊誌に書いてあることを真に受けて芸能人に嫌味をいう、芸能人なんて嫌味を言われてしかるべきでしょって思ってる、役です」

と、正確に自分の役柄を伝えることで笑ってもらえるかな、と思ったらスベったから、早々に隣にいる高知東生さんにマイクを渡した。高知さんは、にこにこ笑って、「ありがと、さやかちゃん」と、小声で言った。

高知東生さんという方は、もちろん先輩で、ドラマ「曲がり角の彼女」でご一緒させていただいたのは2005年のことだ。稲森いずみさん演じる不倫がやめられないバリキャリ(綺麗だったなー!)の新たな恋の行方はいかに?というドラマ。芸能界に入り立てのわたしは、そのドラマの世界も高知東生さんのこともきらきら輝いて見えていた。

再会したのは、2020年。高知さんの復帰作になった、Twitterドラマ「ミセス・ロスト~インタベンショニスト・アヤメ」(ギャンブル依存性問題を考える会制作)

20年近く、時折ご一緒させていただいているが、こんなに印象の変化した方はなかなかいない。そりゃそうだろう、と言われてしまうかもしれないが、決して世間の印象ということだけではなくて、ご本人が醸し出すものが全く違う、と感じるということだ。

高知東生さんのことばは、Xなどで時々話題になったりするが、ズドンと強くこちら側に伝わってくる。

青木さんの著書『母』本連載から生まれた青木さんの著書『母』