ずっと闘っていたい人もいる
大久保 私はデビュー後、芸人だけでは食べていけなくて、副業で会社勤めをしていたのね。するとその「OLの大久保さん」というキャラクターで仕事が来るようになった。当時は劇団もやっていて、テレビの収録がない時に劇団に行く、劇団の稽古がない時にOLをやるという感じで、ほぼ休みなし。
これは死ぬわ、と思ってOLを辞めたのよ。彼氏もいたけど、「年齢的にも余裕があるから、今は結婚より仕事!」とやっているうちに40歳を過ぎて、もう選択肢が少なくなってきた。
壇 私は芸能界に入る前に結婚する予定のお相手がいました。お互いに不安定な仕事だったものの、頑張っていこうね、と。でも彼は私の芸能界入りに反対で、お互い譲り合えないまま別れたんです。チャンスは同時に訪れて、どちらかを選ばざるをえないことがあります。本当は両方ものにしたいけれど。
大久保 いやいや、両方は欲張りだよ。
壇 東村アキコさんの漫画を読んだら、人生を格闘技のリングに見立てて、「女は結婚したらセコンドにまわって、夫や子どもをサポートしたり応援したりしながら生きていくものだった。でも最近は、それができる人とできない人がいる」と描かれていました。ずっと闘っていたい人もいると。
大久保 確かに少し前までは、ある程度の年齢になったらリングサイドで応援する側にまわるのが普通だったものね。私は立ちたくてリングに立っているのか、気づいたらタイミングを逃して降りられなくなったのか、どっちなんだろう。
壇 ひとりでいることを自ら選んでいるところもあるんじゃないでしょうか。うちの両親は共働きで、母は働くことに対するガッツがすごくて、私を産んだ後も仕事を辞める気がさらさらなかった人なんです。
大久保 働くお母さんだったんだ。
壇 そうなんです。だから私も幼い頃から「仕事をしなさい」と言われて育ちました。学校の友人たちは、お母さんがいつも家にいる子ばかりだったので、「うちと違う」と悩みましたし、「結婚して家庭に収まったらダメなのかな?」という疑問を抱いた時期も。
でも今となっては、あの時、不安定なまま結婚していたらと思うとゾッとします。昔は夢見がちで、愛があれば大丈夫なんて思っていたけど、今の仕事に就いたことで地に足がつきました。まあ、ちょっと現実的になりすぎましたけど。(笑)