そこでインターネットで求人がないか調べて、ハウスクリーニング会社の面接に行きました。社長は僕の顔を見て「カラテカの入江さんですよね? なぜうちで働きたいのですか?」とびっくりされていました。

芸人の頃は、売れたい一心で必死にやってきましたが、職も目標も一度に失ってしまった。そんななかで、僕は、この仕事で独立するという新たな目標を立て、社長にお願いして雇っていただいたのです。

同じ頃、渋谷のハチ公前を歩いていた僕は、偶然にも清掃ボランティアをしている方々と出会いました。「チーム渋谷888」という、8がつく日に渋谷「ハチ」公前でゴミ拾いをしているボランティアチームです。

「今からでも参加できますよ」とお声がけいただいたので、その日から僕も参加させてもらうことに。30分ほど作業をした後、眼鏡とマスクを外し自己紹介したところ、「あ、入江!」と、みんなにびっくりされました。

その末がスポーツ紙などで「入江、ごみ拾いのボランティアをする」と報道されたのです。中には騒動を起こした「禊(みそぎ)では」という見方をする記事もありましたが、そういう意味合いではありません。そんな簡単なことで済ませられる問題では決してありませんから。今でも参加できるときは、渋谷でごみ拾いをしています。

 

プロの掃除を毎日勉強して

ハウスクリーニングのアルバイトではおもに、個人のお宅やオフィスのクリーニングを行っています。キッチンのレンジフード、シンク、トイレやお風呂などの水回り、ベランダの片づけ、窓拭き。これらは一人でもできるようになりました。

入江さんの記事が掲載された『婦人公論』12月10日号(11月26日発売)

やってみてびっくりしたのは、レンジフードの油汚れがなかなか落ちないこと。分解して羽根を取り出し、洗剤を入れたお湯につけ置きします。すると油が浮き出てきてきれいに落ちるのです。油はこうやって落とすのだということを初めて知りました。

ただし、エアコンの掃除はまだ見習い中で、先輩方と一緒に行いますが、なかなか難しいのです。普通の、素人の掃除とは違うのでわからないことだらけ。毎日が勉強です。

仕事中についつい地が出てしまうことも。例えばエアコン掃除のときにお風呂場を借りるのですが、住人の方に「お風呂場借りてもいいですか? 僕は入りませんが」なんて言うと、笑ってくださいます。

すると、社長から「そういういう言い方は入江さんにしかできない。場が和んでいいですよ」と褒めてもらえました。一方で、作業の後、お茶をいただいているとき、べらべら話しこんでしまい、「入江さん!」と注意され、ふと我に返ったことも……。