調停成立後、夫の年金が分割される事を確認

ある時、様子が変だと勘ぐった夫が、こっそり子どもに、「学校から帰った時に、ママ、うちにいる?」と聞いたことがありました。子どもは「いるよ」と答えたそうです。当然です。子どもがいない時間帯に合わせて、須磨子さんは働いていたのですから。PTAや子どもの読み聞かせボランティアなどの活動も積極的に続けていました。主婦業と母親業を完璧にこなしながら働いて、一番忙しかった時は、睡眠時間が1週間で4時間しかありませんでした。

そうやって貯金をして、2013年初頭には家を探し始めました。事前に娘たちには「ママは出て行くけど、どうする? ここにいてもいいし、ママと一緒に来てもいい。部屋はあるよ」と意思を確認しました。娘たちは「一緒に行く」と言ってくれました。ただ、どちらと暮らしても、いつでもパパともママとも会えるように、借りる家は近所にしました。同年3月にいまの部屋を契約しました。

新居には、夫にバレないよう、買い物や子どもの送迎のついでに、少しずつ荷物を搬出。子どもが新しい環境に慣れた時分の4月末のある朝、ついに夫に切り出しました。

「出て行きます」

夫は「分かった」とだけ答えました。意外にあっさりしていたのは、「きっと、口だけで、できっこない。出て行っても、やっていけないだろう、って高をくくってたんじゃない?」と須磨子さんは見ています。その日、学校に行く娘たちには、「今日学校から帰ったら引っ越してるから」と伝えました。出奔は成功。「ざまあみろ」と、須磨子さんは快哉を叫びました。

そこから、弁護士を立てて離婚調停を開始。モラハラは精神的DVですが、当時はまだ一般的ではなく、慰謝料を取るのは難しいとのことでした。1年後、協議離婚が成立。夫婦名義で購入していた自宅の半分を財産分与してもらうため、ローン残債を除いた時価相当額を「解決金」としてもらうことに。年金分割もしてもらいました。

調停成立後、須磨子さんはすぐに年金事務所に行って、夫の年金が分割される予定であることを確認しました。これで安心です。翻訳家はフリーランスですから、須磨子さんの年金は国民年金だけでした。夫からの年金分割は老後の生活に大きく影響します。

写真提供◎photoAC