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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

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東京と京都との二拠点居住

現役世代ばりばりの会社員にとっては、定年後は「ノットイコール老後」、まだ老後じゃないでしょう。定年になるとは、会社から解放されて自由になること。まだまだ体も動きます。どこで何をしようかと、定年後に始める「第二の人生」について、夢を描いている人も多いかもしれません。

これまで長く働いてきた首都圏などに残る人が大半で、出身地に戻る「Uターン」は少数派かもしれません(連載8回目に紹介したケイさんが、定年後に郷里に帰るケースでした)。もっと少ないのが、首都圏出身者の地方への「Iターン」、つまり地方移住でしょう。知人も親戚もいない地方への移住は、なかなかハードルが高いものです。

そのIターンを計画中なのが、東京都在住の会社員、志帆さん(仮名、59)です。ただし地方といっても千年の都、京都。今すでに、東京と京都との二拠点居住をしています。「とりあえず10年くらい、60歳から70歳までは京都に住もうと思って。一戸建てかマンションを買いたい」。志帆さんは物件を探し始めるところです。

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3年前の2月の、寒い日でした。志帆さんは4月転勤の転居先を探すため、京都市内の物件を内見しに行きました。駅徒歩15分、オートロックでもなく、階段で、3階建ての2階。築45年の、鉄筋コンクリート造のマンションです。3LDK80平米と、単身で住むにはかなり広め。でも、部屋を見て、志帆さんは一目惚れしました。

「すごいの~。目の前が鴨川で、手前に桜並木があって。春になると、桜の花が咲いて、それがリビングから見えるんだ」

絶景です。鴨川の向こうに家並みがあるわけでもなく、空が広がります。お向かいさんと目が合う心配もありません。ベランダは西向きで、午前中は日が入らず暗いですし、部屋からお花見ができるのは年に数日だけでしょう。でも、この景色は魅力的でした。