ネガティブなことをネガティブに捉えるのは簡単だけど、それをプラスに変換していく強さは必要ですよね。そういう力が得られたのも、ここ数年、いろいろな意味で鍛えられたからかなと思っています。

意外に思われるかもしれませんが、素の私は、ともすれば物事をネガティブに考えがち。そのくせ、ええかっこしいのところがありまして(笑)。小さい頃から、「認められたい」という気持ちが強かったんです。これは、5人きょうだいの末っ子という家族構成も関係している気がします。

物心ついたときには、しっかりものの姉2人、兄2人がいたので、私はいつも半人前扱い。コンプレックスを抱えていました。大人になってからも、かっこつけて、つい力に余ることに挑戦してしまう癖が抜けません。現在の仕事を選んだのも、どこかで家族に認めてもらいたいという思いがあったからかなと、自己分析しています。

 

一所懸命やっていたら、きっと誰かが見てくれている

役者としての転換点となった出来事のひとつが、中井貴一さんとの出会いです。福岡から上京し、小劇場で芝居をしていた頃、当時のマネージャーさんにスカウトされ映像の世界へ。2008年にNHK連続テレビ小説『瞳』に看護師の役で出演しました。

それご覧になった中井さんは、本業の看護師に見えるくらい演技が自然だったと後に話してくださいましたが、当時ご自身が主役を演じていらしたドラマ『風のガーデン』に出演しないかと、プロデューサーを通じて声をかけてくださったのです。

初めてリハーサル室を訪れた日、「今回はチャンスをくださってありがとうございました」とお礼を言ったら、「僕のほうこそ、ありがとう。小さなことでも一所懸命やっていたら、きっと誰かが見てくれているって、よく言いますよね。実際に、そのことを君が僕に教えてくれました」とおっしゃった。わぁ、なんて素敵な方だろうと胸が熱くなり、本当にこんなことがあるのだと、奇跡のように感じました。

もちろん、それですぐに仕事が増えたわけではありませんが、行く先々で、「あなたが吉田羊さんですか」「中井さんから聞いていますよ」と声をかけていただくことが増えて──。徐々に人との出会いが広がり、今に至るわけです。