『婦人公論』12月10日号の表紙に登場している吉田羊さん(表紙撮影:篠山紀信)
現在発売中の『婦人公論』12月10日号で、表紙に登場している女優の吉田羊さん。吉田さんにとって、2019年は個人事務所を立ち上げる転機の年になったといいます。発売中の『婦人公論』から、インタビューを掲載します。(構成=篠藤ゆり)

「自分にはこんな感情もあったんだ」

放映中のドラマ『まだ結婚できない男』に、弁護士の吉山まどか役で出演しています。阿部寛さん扮する主人公・桑野さんは偏屈でプライドが高く、担当弁護士であるまどかはイライラさせられっぱなし。桑野さんのチャーミングさが際立つようなお芝居ができればいいなと思って演じました。

ドラマの撮影が終わるとすぐに、11月末から始まる舞台『風博士』の稽古に突入。こんどは打って変わって、粋で色っぽい元芸者の役です。さまざまな役を演じるたびに、「自分にはこんな感情もあったんだ」と、新しい発見があります。

2019年は、私にとって転機の年になりました。この先数年単位でチャレンジしたいことについて、計画を練っているところです。これからも、まだ見ぬ自分を探し続けたいと思います。

素の私はネガティブでええかっこしい

2019年を振り返ってみると、「おおむね良好」な年でした。「悪くはない、ちょっといい」というくらいの感じ。でも、その「ちょっと」が、本当にありがたかったのです。

今年に入って個人事務所を立ち上げ、新たなスタートを切りました。一人でやっていくことに少なからず不安はありましたが、これまでスタッフに任せていた部分を、すべて自分で考え、判断し、決定しなくてはいけません。今までどれだけ支えられてきたのかを実感するとともに、力を貸してくれたたくさんの方に、改めて感謝の気持ちが湧く1年でもありました。

この10年で、自分を取り巻く環境はずいぶん変わったと感じています。吉田羊という役者が認知されたことによって、幅広い役に挑戦できるようになりました。その半面、当然ですが厳しい評価をいただくことも。

今年の夏に出演した舞台について、ツイッターなどに書き込まれた感想の中に、「吉田羊の芝居は大袈裟だ」という内容のものをいくつか見つけたんです。舞台は、テレビのようにカメラの画角の中に収める芝居と違って、一番後ろの席のお客様にも届くよう、体全体を使って演じます。ナチュラルに演じすぎると伝わりません。

でも、「待てよ。もし大袈裟に見えるとしたら、何が足りなかったんだろう」と、立ち止まって考えたんです。そして、もっと感情にリアリティを持たせるために、次の日は少し変えてみました。すると、自分の中で芝居がパンと通ったと感じた瞬間があって──厳しいツイートのおかげだ、ありがとう、と感謝しました。