なにわ介護男子、本格デビュー

退院を控えて、一番の難題は夜間のトイレでした。

バルーンカテーテル(医療用の管を尿道から膀胱まで通して入れたままの状態にし、尿を膀胱にためずに畜尿袋と呼ばれる袋の中にためる仕組み)を使おうということになったのですが、問題は、誰が管を尿道に挿入するかです。

『なにわ介護男子』(著:宮川大助・花子/主婦の友社)

先生と看護師さんが病室で「月水金に来てくれる訪問看護師にお願いするのはどうでしょう」「うん、それが一番いいかもしれない」などと真剣に話し合っていたときです。

「僕、やりましょか」

どこからか聞き慣れた声がするなと思ったら、大助くんがあの顔で手を挙げているじゃありませんか。

先生も看護師さんも驚いて、「えっ? ほんまですか!?」と。まさか夫の大助くんが立候補するとは思わなかったんでしょうね。

でも、大助くんが至って本気な表情なのを見て、病院と自宅で看護師さんの指導のもと練習してみることになったんです。

そしたら大助くんの上手なこと! ひと通りやり方を教わったら、管を手にして「ほな、いくで」と言うと、一発で尿道にスッ!

「えっ? もうできたん?」と私がびっくりしたくらいです。

看護師さんも「初めは皆さん怖がるのに、大助さんには迷いがない」と絶賛。

みんながあまりにほめるので、気をよくしたんでしょう。

大助くん、「いやあ、もう長いことお世話になったとこですから」。

渾身(こんしん)の下ネタです。でも、誰も笑いません。皆さん、聞こえなかったふりをしてスルーです。

それがよけいにおかしくて、私は心の中で爆笑していました。

30年前だったら、こんなこと絶対に言えなかったですもん。この年になったからこそ、サラッと言えるんです。さすが大助くん。

いつか必ず漫才のネタにしようと思いました。