相変わらず器には目がなくて、今もデパートの食器売り場へ行くと誘惑がいっぱい。友人を招いて、こんなお料理を盛って……と夢が膨らみます。でも「似たようなものを持っていなかったかしら?」と考えたりして、ずいぶんと冷静になりました。

改めて考えてみると、ものを買うという行為は人生の中のひとつの経験なのですよね。恋愛と同じように幸せを与えてくれる一方で落胆することもありますが、どんな経験も無駄ではないのです。私が物欲にブレーキをかけることができるのも、一通りのことを経験したからでしょう。

 

好きなように暮らせば生きる力が湧いてくる

都心を離れて熱海で暮らすというと終活かと思われてしまいそうですが、私の目的は第二の人生を謳歌するために環境を一新することでした。ひとつには「自分の時間を大切にしたい」というのがあります。

幸い私は元気なので、その元気を自分のために使いたいのです。希望どおり、熱海に移り住んでからフラダンスを始めたり、しばらく遠ざかっていた日本画を描くようにもなりました。

時間は有限であると意識すれば、自ずと物事の優先順位や合理性について考えるようにもなります。たとえば友人からお食事に誘われても、それだけのために東京まで行くことはしません。でもスケジュール的にほかの用事と組み合わせることができれば喜んで、という感じ。

心の通じた人とは、何年ぶりに再会してもたちまち打ち解けることができます。都心を離れ頻繁に会えなくなったからこそ、本当にご縁のある人が明確になったという側面もあるのです。