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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

前回「子どものいない夫婦、夫が50歳で亡くなり、分譲の自宅マンションの老朽化に直面。管理組合に参加すべき理由とは?」はこちら

シングルにもひとり手当がほしい!

いまアラ還の女性たちは、1985年に成立した「男女雇用機会均等法」の第1世代です。法律が施行された86年に就職活動をした「均等法1期生」は、現役で大学に入っていたら、ことし60歳。会社によっては定年を迎えます。均等法世代が就職活動をした約40年前、世の中は景気も良く、働く女性に追い風が吹いていました。入社した頃は、独身のまま定年を迎える自分なんて、想像だにしなかったアラ還シングル女子も多いことでしょう。

均等法の始まった当時すでに女性社員が多く、働きやすいとされていた職場がありました。食品、化粧品、通信、流通といった業界です。育児休業や育児時短などの「家庭と仕事の両立」支援策も、国の施策を先取りして整備していました。結婚しても子どもを持っても、長く働き続けられる良い職場だ、とされていました。

女性も働き続けられるという意味では確かに良い職場です。ただし育休などで抜けた同僚の穴を埋める役割は、男性社員ではなく、主にシングル女性が担わされました。「ひとのフォローばかりしてきて、損した気分」と、会社員のちひろさん(仮名、58歳)はこぼします。ずっと独身です。家族持ちの男性に家族手当が出るように、「シングルにもひとり手当がほしい!」と話します。そのココロは……

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ちひろさんは10年前、都内に中古マンションを買いました。当時70代だった母と、二人で暮らすための家です。

すでに父は他界しており、一人っ子のちひろさんと母は、友だちのように仲良く暮らしていました。実家は都内。ところが、ある事情で引っ越さなくてはいけないことに。すでに高齢の母が、環境が大きく変わることで具合が悪くなることを案じたちひろさん。隣近所のコミュニティーから切れてしまわないよう、近隣で引っ越し先を探しました。ちひろさんも生まれ育った土地に愛着がありました。幸い、もとの家からも歩いて20分とかからない、今のマンションを見つけました。