それから五分ほどして、またインターホンのチャイムが鳴った。応対した稔が目を丸くして告げた。
「多嘉原会長です」
 日村も驚いた。
「すぐにお通ししろ」
「はい」
 日村は永神に尋ねた。
「多嘉原会長がいらっしゃることはご存じでしたか?」
 永神はかぶりを振ってから立ち上がった。
「いや、聞いてない」
 若い衆も全員起立だ。テツも立ち上がっている。
 多嘉原会長が事務所に入ってきて言った。
「お邪魔しますよ。阿岐本さんにお目にかかりたいんですが……」
 相変わらず腰が低い。
 日村はまた奥の部屋のドアをノックした。
「多嘉原会長がお見えです」
 ようやくドアが開いた。
 阿岐本が言った。
「こちらにお通ししろ。永神も呼べ」
「承知しました」
「誠司、おまえもだぞ」
「はい」
 奥の部屋の応接セットで、阿岐本と多嘉原会長が向かい合って座った。永神が阿岐本の右隣に座る。
 日村は立ったままだったが、阿岐本に「座れ」と言われて、阿岐本の左側に腰を下ろした。
 これはいよいよ喧嘩の準備だな。
 この顔ぶれで考えられることはそれしかない。阿岐本は、兵隊としてテキヤを動員することを考えたのではないだろうか。日村はそう思った。
 

 

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