義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。

 奥の部屋を出て、いつものソファに座った。若い衆が四人とも顔をそろえている。彼らを見たとたんに、日村は急に恐ろしくなった。
 オヤジは本当に出入りをやるつもりなのだろうか。そうなれば、目の前の若い衆は無事では済まない。
 実態はないということだが、西の二次団体となれば、拳銃くらいは用意できるだろう。自分だけのことなら腹もくくれるが、若い衆がどうなるかわからないと思うと恐怖に襲われた。
 悪い想像に陥り、一人で怯えていると、インターホンのチャイムが鳴りびっくりした。
「あ、香苗です」
 インターホンのモニターを見て真吉が言った。
 日村は「帰ってもらえ」と言おうとしたが、真吉がそれよりも早くドアを解錠してしまった。
「こんにちはー」
 元気のいい声が響く。
「こら」
 日村は言った。「ここに来ちゃいけないと、何度言ったらわかるんだ」
「どうして?」
「高校生にもなって、そんなことがわからないのか」
「高校生になったから、わからなくなったんだよ」
「どういうことだ?」
「あ、それに今日も保護者付きだからね」
「え……?」