そのとき、奥の部屋のドアが開いて、阿岐本が姿を見せた。
「おお。坂本のマスターじゃないか」
「またコーヒーをお持ちしました」
「そいつはありがたい。みんなの分もあるかい?」
「はい。たっぷりと」
「じゃあ、さっそくいただこう」
真吉と稔がカップを用意して、マスターがポットからコーヒーを注いだ。いい香りが漂う。
みんなでコーヒーを楽しんでいると、日村の携帯電話が振動した。
「駒吉神社の大木神主からです。失礼します」
阿岐本にそう断り、日村は電話に出た。「どうしました?」
「原磯が誰か連れてくるって言ってるんだ」
「誰か……?」
「宗教法人ブローカーの話をしてましたよね? たぶんその人を連れてくるんだと思いますが……」
「少々お待ちください」
日村が阿岐本に電話の内容を告げようとすると、マスターが香苗に言った。
「さて、そろそろおいとましよう。阿岐本さん、失礼しますよ」
彼はポットを持ち、香苗を連れて事務所を出ていった。さすがに気がきく。
日村は阿岐本に言った。
「原磯が誰かを神社に連れてくると言っているようです。たぶん、高森じゃないかと……」
「俺たちが顔を出すわけにもいかん。先方の連絡先を聞いておくように、大木さんに言ってくれ」
日村はその言葉を伝えた。
「あの……」
大木神主が言った。「何かあったら助けてくれますか?」
日村はこたえた。
「もちろんです」