そのとき、出入り口のドアが開いた。仙川係長と甘糟だった。
 エリが言った。
「すみません。これから貸し切りになるんです」
 阿岐本が言った。
「ああ、この二人は連れです」
 仙川係長が阿岐本に近づいてきて言った。
「ここで何をするつもりなんだ?」
 阿岐本がこたえた。
「話をつけます」
「話をつける……?」
「今からしばらくは、私らの時間ですので、何も言わずに見守ってやってください」
「おい、それはどういうことだ」
 阿岐本が仙川係長を見据えて言った。
「お願いします」
 とたんに仙川係長はすくみ上がった。蛇に睨まれた蛙というやつだ。阿岐本が言った。
「あちらの席にいらしたらどうでしょう」
 近くのボックス席を指さす。仙川係長は何も言えず、甘糟とともに移動してその席に腰を下ろした。