高森が再びうなだれて言った。
「金、借りちまいまして……」
「金を借りた?」
「はい」
「中国人にか?」
「はい」
高森はまだうつむいたままだ。
「資産家なんだね?」
阿岐本の問いに、高森は顔を上げた。
「ただの金持ちじゃねえんで……」
「なるほど、マフィアかい?」
「おっしゃるとおりです」
阿岐本と多嘉原会長が顔を見合わせた。
多嘉原会長が高森に言った。
「突っ立ってねえで、まあ、座んなよ」
「はい。失礼します」
高森は原磯の隣に腰を下ろした。原磯が怯えた様子で肩をすくめた。
阿岐本が日村に言った。
「おめえも座れ」
「はい」
日村が阿岐本の隣に座ると、阿岐本が高森に言った。
「こいつは、うちの代貸で日村ってんだ」
「高森です」
凄んでいた先ほどとは打って変わって低姿勢だ。
「あの……」
日村は高森に尋ねた。「お一人ですか?」
高森はきょとんとした顔でこたえる。
「そうですが……。今日はなんとか大木さんを説得しようと思っていましたので……」