もちろん今だって「我」はあります。ただ、互いに歳をとったわねと感じ始めたどこかのタイミングで、最後の年月は夫の考え方に沿ってみようと決めたんです。

だからといって、夫にこうしてほしいとか、こういうことはしないでほしいとか思わないというわけではなく、思わないようにしているの。不満やいらだちを抱えて葛藤するよりも、「いや、私は何も望んでいない」と急いで思考回路を切り替えるようにしてます。

自分のことだってわけがわかんないのに、他人である夫に対して期待するってのは、虫のいい話なんです。「私はわけがわかってます」という人は傲慢。自分は正しいんだから、なんて意地を張らないほうがいい。大勢に影響はないんだからと考えて、さっと譲ってしまえば楽になります。

あと、他の夫婦と自分たち夫婦とを比べないことも大事ね。それをやり始めたら、自分の幸せや夫のいいところが見えなくなるから。

私の結婚観も若い頃は、「夫婦が協力し合って家庭を作っていく」というものだった。だけど、出会ったのが、ルールを一切守らない人だったわけです。それでも夫のいいところをみつめてきた。そうできたのは、世間体や「夫婦はこうでなくてはいけない」という型に縛られていなかったからだと思う。きっと自分というものが強いのでしょう。

私は若い頃から、男の人に何かを決められたことは一度もないの。つき合うにしても向こうから言ってくる人は苦手で、自発的に好きになった人限定だったし、どういう関係性を築くのかも私が決めてました。そりゃあしたたかだったんです(笑)。でもそれが女の役割かなっていう気がしてます。

人生はいろいろあっても最後がよければいいじゃない? それが結婚生活をまっとうすることなのか、離婚することなのかは人それぞれだから、私は知らない。ただ自分の心に嘘をつかずにシンプルに生きていれば悔いは残らない。このことは言い切ってもいいように思いますね。