撮影:大河内 禎
現在発売中の『婦人公論』10月8日号で、表紙を飾っていただいている内田也哉子さん。本誌では母・樹木希林さんと父・内田裕也さんへの思いを語っています。そこで今回は、2018年5月、樹木希林さんが最後に『婦人公論』の表紙に登場してくださった際のインタビューを再掲。現在発売中の10月8日号とあわせてお楽しみください。(構成=篠藤ゆり)

持っているものでやっていく

今日は、まったくのノーメイクです。お化粧をしなくてもいいかしら、と編集部の方にお願いしました。そのほうが、ありのままの皮膚感が出て、いいんじゃないかと思って。

『婦人公論』2018年5月22号。撮影=篠山紀信 この表紙撮影はノーメイクで臨んだ

ワンピースは、着物を仕立て直したもの。もちろん自前です。上に羽織っているグレーの絞りのボレロは、もともとスカーフでした。私には長すぎて使いにくかったので、ちょっと縫って手を通せるようにして、ボレロにしたのです。

すばらしい、というほどのアイデアじゃないわよ。持っているもので、なんでもやっていくだけ。もう、新たに何か買わないことにしているのです。ものを整理して、減らしながら、使えるものは生かしていく。だって、もったいないもの。だから、考えて、工夫する。アイデアが浮かぶと嬉しいし、ちょっとおもしろいでしょう?

 

「もっと、もっと」という気持ちをなくす

若い頃は、衣食住すべてに興味を持っていました。でも、ある程度の年齢になると、面倒になってくるのですよ。もう、おしまいにしなくてはいけない年齢です。そんなにおいしいものを食べなくてもいいし、着るものも減らしていきたい。住むところは、すでにあります。

私は今や何も買わない。内田(ミュージシャンの夫・内田裕也さん)が「出せ、出せ」と言うから、お金は全部あちらに行きます(笑)。あっちは使うのが得意で、バラまくみたいな使い方をする。

体調は、決してよくはありません。2004年に乳がんの手術をした後、再発しました。転移するたびに、モグラたたきみたいに出たらたたいて治療するという状態です。映画の撮影や、取材を受ける時は気持ちのトーンが上がるけれど、それは瞬間芸みたいなものね。うちでは、ずーっと静かにしています。ただ、医者のデータで状態がよくないだけで、私自身は、ちっとも変わらないのです。気持ちの問題でしょうね、私の場合。

「もっと、もっと」という気持ちをなくすのです。「こんなはずではなかった」「もっとこうなるべきだ」という思いを一切なくす。自分を俯瞰して、「今、こうしていられるのは大変ありがたいことだ、本来ありえないことだ」と思うと、余分な要求がなくなり、すーっと楽になります。もちろん人との比較はしません。

これはやはり、病気になってから得た心境でしょうね。いつ死ぬかわからない。諦めるというのではなく、こういう状態でもここまで生きて、上出来、上出来。そのうえ、素敵な作品に声をかけていただけるのですから、本当に幸せです。

 

四六時中一緒にいなくてもいつも頭のなかに

今回出演している映画『モリのいる場所』は、画家・熊谷守一の物語で、守一を山崎努(崎は「たつさき」)さんが演じられると聞いて即座に「はい、やります」とお引き受けしたのです。守一の絵には、若い頃から親しんでいました。猫の絵が有名で、「これ、小学生が描いたの?」と言いたくなるくらいシンプルな画風でよく知られています。足が悪くなり、亡くなるまでの30年間、庭から一歩も外に出なかったそうです。庭の植物、石、蟻などの生き物を毎日何時間もじーっと観察し続けたとか。そして、97歳で亡くなる数ヵ月前まで、墨絵や書を描いていました。

守一さんはとてもチャーミングな方。しかも、世間に媚びない。守一を演じた山崎努さんとはこれまでご一緒するチャンスがまったくなかったのですが、この作品で出会え、至福でした。山崎努さんは、守一のことを「僕のアイドル」と呼ぶくらいお好きなのですよ。