あくまで自分のために

「僕らは24年前の同じ日に事故に遭い、リハビリの病院で偶然知り合ったんです」

そう言って笑うのは、古谷卓さん(50歳)と丸野飛路志さん(60歳)だ。古谷さんは脊髄損傷、丸野さんは右脚切断で義足。ともに車椅子を使っている。

「スポーツが好きで、事故後も車椅子バスケやアイスホッケーなどはやっていました。でも、バイクにもう一度乗れるとは思ってもみなかった。丸野さんが、『乗れるかもしれないけど、やってみる?』と誘ってくれて、『やる』と即答。初めてバイクに乗った時は、足が動かないのを忘れるぐらい楽しかった」と古谷さん。

丸野さんは、自分よりも重傷の古谷さんに気兼ねしつつ、彼のためにできることを探っていたのだと言う。

「僕は義足なので普通のバイクにも乗れるのですが、同じバイク好きの古谷さんの前では乗らないようにしていました。そんな時SSPを知り、1人で見学へ行って。これなら古谷さんにも紹介できると思ったんです」

今でも2人は病院やサーキットで少なくとも月に1度は顔を合わせ、走ったあとは帰り道の《反省会》を楽しむ仲だ。

「次のレースのこととか、あのバイクの乗り心地はどうだったとか、話は尽きません。彼はいわば戦友のようなもの」と丸野さん。バイクを通じて、2人の友情はより深まったようだ。