50代独身3人衆から逃れる術は
気のいい義弟1人ならば、まだ少しは心穏やかでいられるだろう。
「夫のきょうだいが50代の独身男3人で、手のかかる偏屈ぞろいだから、そんなことは言ってられません」
と鼻息荒く言うのはマサコさん(47歳)だ。夫の3人の兄は、上から55、52、50歳。いずれも未婚で、早くに夫を亡くした母親と一緒にずっと実家暮らしである。
「それぞれに仕事はしているけれど、一度も実家を離れたことがない。家を出たのは、末っ子のうちの夫だけ。お義母さんは女手一つで長い間、子どもを育ててきて、父親役もやっていました。家事のほかに、対外的なことも全部。
そのせいか、息子たちは何もできなくて、お義母さんに頼りっぱなし。今なお、炊事、洗濯、掃除すべて親まかせ。回覧板のまわし方も知らない。
わが家と夫の実家とは同じ町内にあるんですが、定期的に行われる地域の清掃作業に出るのはいつも80歳の義母。『大きな図体した息子が3人もいるんだから、そいつらをよこしなさい』と、自治会長さんに私が怒られました」
義母が病気で倒れたときのこと。いちばん上の義兄がマサコさんの家にやってきて、「おふくろの具合が悪いみたいだけど、どうしたらいいだろう」とオロオロ。「救急車を呼ぶか、すぐに病院に連れていかなきゃダメでしょ」とマサコさんは一喝。夫とともに車で義母を病院に連れていった。
このときは10日間の入院となったのだが、義兄たちは準備もどうすればいいかわからず、結局、入院のためのあれこれも、毎日、病室に通うのも、マサコさん夫婦だった。
「義母の入院中、実家の近所の人から『来て』と連絡があり、行ってみると、実家の勝手口から家の中までゴミの山。毎日コンビニで弁当を買い、ゴミを捨てることも知らず、男3人、ゴミ屋敷で平然と暮らしてるんですよ。そして、ことあるごとに、『助けてくれ』とうちを頼ってくる。放っておけばいいのに、人のいい夫は、すぐに駆けつけてしまう」
そんなマサコさんは、「今後」に怯える。義母に介護が必要になったとき、何もできない3人の義兄にかわって、自分たちにその役目がのしかかってくるのでは、という不安。さらに背筋がぞっとするのは、歳をとった3人の伯父たちの面倒を、マサコさんの2人の子どもがみなければいけなくなるという恐怖……。
「義兄たちがすぐに来られない遠くに行くしかない。今、真剣に引っ越しを考えています」とマサコさん。夫のきょうだいは、こういう形でも、敵として目の前に立ちはだかるのだ。