まだないものに興味がある

尾崎世界観さん
(c)文藝春秋

もともと自分は不器用な人間なので、ずっと悔しい思いをしてきました。でも、「何かまだこの世にないものを作りたい」という気持ちは人一倍強くて。絵もうまく描けないんですが、子どもの頃、まわりがアニメのキャラクターを一生懸命練習している時に、自分はもしかしたら天才かもしれないと思って架空の何かを描いてみたり。やっぱり全然描けないんですけど(苦笑)。でもそういうふうに、まだこの世にないものにずっと興味がありました。だから、バンドを始めてからも、誰かの曲をコピーして演奏したことがないんです。

ただ技術がなくて上手くコピーできなかったのもありますが。コピーしたところで絶対本物と同じ音にはならないし、上手く演奏できたとしても、その人には絶対に勝てない。それなら、その時間を使って、完全なオリジナル曲を作ろうと思いました。

自分が何者かになれた証拠とは

小説は、音楽活動が落ち着いて時間に余裕がある時に、スマートフォンか(デジタルメモの)ポメラで書くことが多いですね。書くこと自体、ストレスがたまる作業です。たとえばこうして取材をしていただいて、調子のいいことを口では言えますが、いざ書くとなるとやっぱり本当に難しい。インタビューを通して、声にしながら気づくことも多いんですが、いつも話すことと書くことの違いに打ちのめされています。

そして、8月31日に放送された、NHK Eテレ ハートネットTV『#8月31日の夜に。』に、昨年に続いてMCとして出演させていただきました。10代のみなさんの声を受け止められる貴重な機会なので、本当に勉強になります。悩みに答える時、声にして、言葉にしてみることで、自分自身の考えも変わってくるんですよね。切実な悩みを打ち明けてもらっているからこそ、こちらからもまた新たな気持ちが引き出される。自分でも考えたり言葉にしたりするきっかけをもらえるので、すごくありがたいです。