シサムとアイヌ
アイヌの人々が和人、即ち日本人のことを呼ぶ言葉が即ちこの映画のタイトルとなる「シサム」だ。
「我々を苦しめるシサムをなぜ手当てし、匿うのだ?」と言う村人も当然出てるが、心優しい村の長や女たちに守られ、孝二郎はだんだん回復、鮭漁にも参加する。このあたりになると、皆さんも相当に「アイヌファン」になってしまうのではないか。私も体が丈夫であったら、こんなふうに大自然の中で暮らしてみたい。実際はすぐに寒さや病にやられ、半年と持たないと思うが、憧れる生活だ。
さて、孝二郎とアイヌ娘との甘い恋愛も始まるのかと思ったが、本作はそんなイージーさを許さなかった。孝二郎はやがて善助と再会するが、その時には和人とアイヌの衝突と交戦が既に激化していた。
そんな中で遂に孝二郎は兄の仇、善助と再会。一度は完全に叩きのめされた善助に孝二郎は勝てるのか? 実は善助には、松前藩を裏切る理由があった。そのうえ更に重い宿命を抱えていることを、孝二郎は知ることになる。
孝二郎は仇討ちの「義」と、人としての「仁」の板挟みに懊悩することになるのだが、最終的に孝二郎がとった行動とは!?
善助との再会以降の展開は息を飲むばかり。実際は映画以上に残虐な殺戮があったろう。心に刺さる様々なシ―ンが続き、最終的にアイヌの苦難の未来を感じさせるが、映画を見終わって一抹のエクスタシーを感じるのは主人公や数人の武士たちの行動の中に、人間らしさを垣間見せてもらえたからだ。