俳優の高橋惠子さん(左)と映画監督の夫・高橋伴明さん(右)(写真提供:高橋惠子さん)
俳優として第一線で活躍を続ける高橋惠子さん。映画監督の夫・高橋伴明さんと二人三脚で歩んできた。夫妻は人生の終末期の希望を伝える「リビング・ウイル」を揃って認(したた)めているという。その意義について話を聞いた。(構成:篠藤ゆり)

役を生きることで「死」について考えて

私は比較的若い頃から、人にとって「生」とは何か、「死」とは何かを考えてきました。ひとつには、役者という仕事をしてきたからかもしれません。役者はさまざまな人の人生を演じますが、年齢を重ねると、病気になったり死んだりする役も多くなります。

30年ほど前、医療過誤で植物状態になる女性の役を演じたことがありました。回想シーンで元気な頃の場面も少しは撮影しましたが、大半はベッドで横たわっているだけ。私にできる演技といえば、繋がれている機械に合わせて呼吸をすることくらいです。

でも夫が娘の結婚式の様子を語ってくれるのを聞いて、意識がないまま、すーっと涙を流すシーンがあって――。

最初に脚本を読んだ時は、寝ているだけの役で台詞もないし楽かしら、などと思ったりもしましたが、表情がないまま涙を流すのはなかなか難しかったのをよく覚えています。