撮影前に、実際に意識障害のある方にもお会いしたんです。聴覚は最後まで残っているとよく聞きますが、その方も、私が話しかけるとわかってくださったような気がしました。

その時に思ったのが、意識がなくても魂はそこにあって反応してくれているのではないか、ということでした。

肉体は形のある「器」であり、魂は別にある。だからたとえ「器」がなくなっても、魂は存在し続けるのではないか。だとしたら、肉体の終わりである「死」を恐れる必要はない、と思ったのです。

2年前に『アナログ』という映画で二宮和也さん演じる主人公の母親役をやらせていただいた際には、生まれて初めて実際にお棺の中に入る経験をしました。棺桶の中の私が映るのはほんの数分でしたが、2時間くらいお棺に入っていたんじゃないかしら。

というのも監督さんが、二宮さんが母親の思い出を語っている間、そこにいてほしいとおっしゃったからです。棺桶の中でじっとしながら、「いつかは自分も必ずここに入るんだ。だったらそれまでの間、悔いのないように生きたい」と改めて感じました。

何かの本で読んだのですが、人は亡くなる前に後悔するとしたら、「あんな失敗をした」ということではなく、「あれをやり残した。やっておけばよかった」ということだそうですね。なるほどと思いました。だから思い残すことがないように生きたいと、改めて感じたのです。