中園 向田邦子さんは、引っ越しの際、自分の脚本は全部捨てていたそうです。放送は流れて消えるものだからって。あとでみんなは嘆いたらしいけど、そういう人の作品が、後世に残るのかもね。狭い家なのに、デビュー作から全部台本とってある私なんて……。
清水 向田さん、お好きだったんですよね。
中園 本当に憧れていたから、よく向田さんの夢を見ていた時期があって。ある時、盛岡のボーイフレンドに会いに行った帰りに新幹線で寝ていたら、突然、新幹線ががたっと止まって目が覚めたの。
その時、ちょうど向田さんと旅している夢を見ていて、向田さんも私も鞄を持って、一緒に雲の話をしてるんですよ。それがすごく嬉しくてね。家に着いたら、向田さんが亡くなったというニュースが入ってきた。ひょっとしたら、新幹線が止まったあの時だったんじゃないかって、今も思ってる。
清水・林 えー。
林 あなたに、向田さんが乗りうつったのかもしれないね。
中園 いえいえ、あの方は51歳で亡くなって、私はもうその年齢をはるかに超えてしまったのに、まだ何も追いつけてないから。
林 時代が違うもの。テレビにとって苦しい時代に、これだけのヒット作を飛ばしてるじゃない。
清水 私もそう思う。みんなで試行錯誤してあがいて、もうこれ以上がんばっても視聴率は上がらないものと思っている時に、中園さんの存在は大きいと思う。それにしても、中園さんは霊感がないって言いながら、十分ありそうなエピソードだね。
〈後編につづく〉
清水ミチコさんの好評連載「三人寄れば無礼講」書籍化!
2人×18回、“今、会いたい人”を招いて繰り広げられる、ざっくばらんで愉快な鼎談。
・第1回:南伸坊 / YOU
・第2回:三谷幸喜 / 大竹しのぶ
・第3回:林のり子 / 吉本ばなな
・第4回:養老孟司 / 甲野善紀
・第5回:野沢直子 / 藤井隆
・第6回:蛭子能収 / 五月女ケイ子
・第7回:井上陽水 / 山下洋輔
など
出典=『婦人公論』2019年12月24日・1月4日合併特大号
清水ミチコ
タレント
1960年岐阜県生まれ。モノマネをはじめとするお笑いにとどまらず、女優、司会、エッセイ執筆など幅広く活動。『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京系)、『ラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)にレギュラー出演。YouTube「清水ミチコのシミチコチャンネル」で撮り下ろしネタを公開。著書に『カニカマ人生論』『まるい三角関係~三者三様おしゃべり三昧』などがある。全国ツアー「清水ミチコ万博~ひとりPARADE~」開催中。詳しくは公式サイト4325.netをチェック!
中園ミホ
脚本家
東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、広告代理店勤務、コピーライター、占い師の職業を経て、88年に脚本家としてデビュー。2007年に『ハケンの品格』が放送文化基金賞と橋田賞を、13年には『はつ恋』『Doctor-X 外科医・大門未知子』で向田邦子賞と橋田賞を受賞。その他の執筆作に『For You』『Age, 35 恋しくて』『やまとなでしこ』『anego』『下流の宴』『トットてれび』連続テレビ小説『花子とアン』同『あんぱん』大河ドラマ『西郷どん』『七人の秘書』『ザ・トラベルナース』など多数。また、現在も占い師としての活動を継続中で、これまでの経験を生かして、エッセイ『占いで強運をつかむ』『相性で運命が変わる 福寿縁うらない』(ともにマガジンハウス)『強運習慣100』(エクスナレッジ)の執筆や、公式占いサイト『解禁! 女の絶対運命』(https://nakazono-miho.marouge.jp/)の監修も手掛ける。
林真理子
作家
1954年山梨県生まれ。日本大学藝術学部卒業後、コピーライターとして活躍。86年「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞を受賞。『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、『みんなの秘密』で吉川英治文学賞を受賞。2020年には日本文藝家協会の理事長に女性として初めて選出された。『西郷どん!』は18年のNHK大河ドラマ原作になった。同年紫綬褒章受章。20年には週刊文春での連載エッセイが「同一雑誌におけるエッセーの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定。同年第68回菊池寛賞受賞。22年7月に日本大学理事長に就任。『私はスカーレット』『四十雀、跳べ!』なと著書多数
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