阿岐本が原磯に言った。
「俺たちの本性が少しはおわかりになったでしょう。縁を切ることです」
 原磯はがくがくとうなずくと言った。
「はい。阿岐本親分のおっしゃるとおりにします。いや、勉強になりました。やはり、付き合うなら大物じゃないと……」
「そういうことじゃねえんで……」
 原磯はすっかり懲りている様子だ。暴力団排除条例もあることだし、原磯とのことはもう心配はないだろうと、日村は思った。
 多嘉原会長が言った。
「神主さん」
「はい」
「商売(バイ)はできねえが、お祭りに遊びに行っていいですか?」
「そりゃあもう……。祭りには誰でも参加できますので」
 多嘉原会長が阿岐本に言った。
「どうです、阿岐本さんも?」
「そいつはいいですね。祭りは心が躍ります」

 だらだらと飲む者はいなかった。いつまでも貸し切りにしていると店に迷惑だということもあり、午後九時頃にはお開きになった。
 阿岐本から財布を預かり、日村が勘定を済ませようとすると、高森が払わせてくれと言った。
「オヤジからうちが払うように言われています」
「じゃあ、せめて折半で……」
 結局、半分に割って払った。
 ママのエリさんが言った。
「おたくの親分なら歓迎だから、いつでも来てちょうだい」
 それにアヤが付け加える。
「真吉さんもね」
「恐縮です」
 日村は頭を下げた。