車で多嘉原会長を自宅まで送ることになった。多嘉原会長は「電車で帰る」と言ったが、一人で帰すわけにはいかない。
来たときと同様に、助手席に日村、後部座席に多嘉原会長と阿岐本がいる。
多嘉原会長の声が聞こえてくる。
「これで、駒吉神社は一件落着ですね」
それに阿岐本がこたえる。
「はい。会長のおかげです」
「私は何もしていませんよ」
「会長が高森のことを思い出してくださったから、大事にならずに済みました」
「西の直参と聞けば、腹をくくりますわなあ……」
「舎弟の早とちりでした。まことにあいすまんこって……」
「その永神さんは、どこかで待機しているとおっしゃってませんでしたっけ?」
「おっと……」
阿岐本が言った。「すっかり忘れていた。誠司、電話してやんな」
「はい」
「てめえのせいで、いらん心配をしちまったと言ってやれ」
日村は電話した。
「誠司か。どうなった?」
「話はつきました。一件落着です」
「喧嘩じゃなかったのか?」
「実は、高森は多嘉原会長やオヤジの古い知り合いでした。初代花丈組組長が会長やオヤジと懇意だったようで……」
「何だって……」
「西の直参は高森ではなく、先代の花丈組組長のことらしいです」
「あ、そうなの……」
「これはオヤジの言葉なんですが、てめえのせいで、いらん心配をした、と……」
「うわあ……。怖いので、俺はこのまま引きあげるからな」
「お疲れさまでした」
電話が切れた。
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