ギャリソンは諦めない

しかし、ギャリソンは諦めない。あまりにも向こう見ずなその行動から目が離せず、私は見るのを途中でやめることができなかった。ある意味彼は、たまたま風車に吹き飛ばされずに済んだ、幸運なドン・キホーテだ。

ではギャリソンは「愚かで向こう見ず?」そう聞かれたら、私は「いいえ」ときっぱり答えるだろう。なぜなら、彼のような人がいなければ、JFK暗殺は「オズワルド単独犯説」のまま、歴史の中に埋もれるしかなかった。

ギャリソンがいたからケネディ暗殺は、「陰謀」だと思われるようになったし、映画『JFK』のヒットを受けて、2029年まで非公開だったケネディ暗殺にかかわる機密情報が2019年に公開されることになったのだ。

映画のクライマックスの法廷シーンでは、そこまでは描かれない。しかし、「自分の子どもがいつかその情報を目にするだろう」と訴えるギャリソンの言葉に私は、鳥肌が立ち、目頭が熱くなった。たとえダブルスタンダードでしかなくても、アメリカには一分の公正さが残されている。それを証明しなくては、「国際社会をけん引するアメリカ」たりえない。情報公開後につくられた『JFK/新証言 知られざる陰謀』の日本語字幕版はネット配信サービスで視聴できるので、興味のある方はぜひ。