感染症の捉え方が変化した理由
始まりは19世紀の終わり頃。感染症の原因が微生物であることが分かったことです。
日本人では北里柴三郎が、破傷風菌の純粋培養に成功し、その後ペスト菌を発見するなど、病原菌の研究で重要な役割を果たしました。原因が分かれば対処法が考えられます。
20世紀に入ると、まずワクチンが開発されました。
研究が進み、私が子どもを育てた20世紀半ばには、乳児の時に、ジフテリア、百日咳、破傷風の三つの病原菌に対する三種混合ワクチンを打ち、その後、はしか、ポリオ(小児麻痺)など、さまざまなワクチンで感染症予防ができ、安心して子育てができました(今はさらに多くなっています)。
また、結核は抗生物質が発見されたことで、治せる病気になりました。
最初に発見されたのはペニシリン(1928年)で、1942年に実用化されました。太平洋戦争中だったため、日本ではすぐには使えず戦後徐々に普及したことが、私の記憶の中にあります。次々と新しい抗生物質が見つかり、医療が変わっていった様子も覚えています。
もう一つは公衆衛生の向上です。
とはいえ、高度経済成長期の日本を見ても、まだ公衆衛生が定着しているとは言い難いところがありました。街や公的施設などには、今の若い人たちが見たら驚くような不衛生な状態が見られました。
そして、この50年ほどの間に公共空間がとてもきれいになり、清潔な暮らしが当たり前になりました。
ワクチン、抗生物質の活用と公衆衛生の普及によって感染症が減ることで若年層の死亡率が低下し、高齢社会になり生活習慣病が浮び上がってきたのが現状というわけです。