感染症の歴史を辿る

ところで、私の子どもの頃は、病気といえば感染症のことを考えました。

百日咳は細菌による呼吸器の感染症で、主に子どもがかかります。赤ちゃんが感染すると、命を落とすことも珍しくありませんでした。

『ウイルスは「動く遺伝子」』(著:中村桂子/エクスナレッジ)

ポリオに感染して小児麻痺(しょうにまひ)になり、足が不自由になる子もいました。天然痘にかかり顔に「あばた」が残っている人に街で出会うこともありました。

結核は国民病といわれるほど患者が多かった病気で、大学時代の友人にはサナトリウムに入っていた人もいました。

結核菌が脊椎に感染して起こる脊椎カリエスに罹患した正岡子規は、文学者として素晴らしい仕事をしましたが、「病床六尺」<『病牀(床)六尺』(子規随筆集)>の世界で暮らしていたわけです。

それが今では、感染症を命に関わる重大な病気として捉えない時代になりました。急速に医学が進歩したからです。