10年ぶりのアルバムとなった『Precious Days』(竹内まりや/ワーナーミュージック・ジャパン)

父母から教わったこと

アルバムに収録した「Smiling Days」という曲に、「日常の中の些細なことに喜びが宿っている」という内容の歌詞があります。何気ない一日を大切にして、ささやかな日常を面白がって生きることが、私の人生の大きなテーマなんですね。

だって、人生のほとんどはハレの日ではなく、ケの日が続くんですから。だったら生活の中のちょっとした出来事を面白がって生きることが、毎日を幸せに過ごす秘訣だと思います。

私の場合ですか? たとえば「今日乗ったタクシーの運転手さんの人生話が興味深かった」とか、「母校の(島根県立)大社高校が甲子園でベスト8まで勝ち進んでめっちゃ嬉しい!」というようなことです。(笑)

そんなふうに感じるのは、私が育った家庭環境と関係しているのかもしれません。2男4女の6人きょうだいで、私は上から4番目。両親も交えると8人の大家族で、一緒にワイワイとご飯を食べるのが楽しいなとか、家業である旅館のボイラー室で働いていたおじさんと、お茶を飲みながらおしゃべりをしている時間が面白いなとか。

誰かの誕生日や特別な記念日じゃなくても、日々の生活の中でささやかな喜びを感じられる瞬間がたくさんあって。そんな幸せな記憶の数々が心の奥底にインプットされているような気がします。

両親からも多大な影響を受けました。数年前に亡くなった父からは、「ものごとのいいところを見ようよ」といつも言われていました。どんな時でも「ありがとう、ありがとう」と言う人でしたね。

父は若い頃に独学で英語を学び、アンディ・ウィリアムスやトニー・ベネットといったアメリカンスタンダードの曲を英語で歌うのが好きでした。私が10代でアメリカに留学したいと思ったのも、父の影響が大きいかもしれません。

母は超楽観主義で、好奇心が強い女性です。ありがたいことに96歳のいまも元気で、長年続けている書道教室に通うため、年に数回、島根と東京を往復しています。

足が痛いと言いながらも、趣味のガーデニングにいそしみ、「これをやっているとボケないのよ」と、クロスワードパズルやタブレットゲームに熱中したり、新しいことへの冒険心が旺盛。こんな90代になれたらいいなって思います。