落ち着いて室内を探すと…

とにかくいったん落ち着こうと、手洗い用の水を出し、ひと口分すくって、喉を潤す。

パニックが少しおさまった。室内になにか役立ちそうなものはないか探す。

すると、掃除用ブラシの横に立てかけていたうちわが目にとまった。

ドアと壁の間にうちわを差し込んでみると、なんとか入った! 上下に動かすこともできる。

うちわを動かしながらドアを引っ張ると、何事もなかったかのようにドアが開いた。

原因はわからないが、とりあえずひと安心だ。

ところが、外に出てドアを閉め、ちゃんと開くかどうか試しにドアを押してみると……開かない。

入れないのも困るので、再びうちわを差し込んで開け、その日はドアを開け放しにしてやり過ごすことにした。

いつかは私もひとりになるかもしれない。日頃、不満ばかりでストレスいっぱいの夫への感謝を忘れないようにしようと決意しつつ、ひとりでも不安なく暮らせる自分でありたいと思う。

家のメンテナンスや近所の方々との交流も大切にしていかなくては、と感じたできごとだった。


※婦人公論では「読者のひろば」への投稿を随時募集しています。
投稿はこちら

※WEBオリジナル投稿欄「せきららカフェ」がスタート!各テーマで投稿募集中です
投稿はこちら