3度目の話し合い
「良い人生」を考えるために、様々な視点が示されている。ただし、これらには詳しく立ち入ったわけではなく、大きく全体像を見せるものだった。
先生は、話の合間に何度か「何か意見やコメントはある?」と聞き、2人の生徒がコメントしていた。
フィンランドで、生徒はそれほど活発には発言しないことが多い。しかし、グループでの話し合いは滑らかだった。
3度目のグループの話し合いでは、良い人生に必要なものを3つに減らす。
そこであげられたのは衣食住などの基本的なニーズ、安全、意義ある人間関係、自分のことを決める自由、評価・尊重されること、友達、家族などだった。こうして必要なものが絞られていった。
最後に、先生は広告とスマホの問題に戻って授業を終えた。それは、自分の欲望をつくるものは何かという問いである。
そこには、自分の選択や行動は、広告や資本主義、市場経済に誘導されているのではないかという問い、また過剰な消費に対する批判が含まれていた。
この授業はスマホを縦軸に、それをどう考えるかを横軸にし、グループの話し合いを3回挟むという密度の濃いものであり、また幅広く様々な視点を提供していることに感心した。
※本稿は、『フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
『フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養』(著:岩竹美加子/青春出版社)
世界幸福度ランキングで、7年連続1位に輝いたフィンランド。
フィンランドの学校には「良く生きるための授業」がある。
「良い人生って何?」「生きる意味はどこにある?」などの問いに向き合いながら、自分だけの答えを探すフィンランド独自の授業、そしてその教科書から、幸せに生きるヒントを探る。