“愛あるお説教”
冒頭の言葉は、四半世紀以上は前のこと。ピーコさんと私は当時ある雑誌の同じページでコラムを担当していて、その編集担当者が度々仕切ってくれた食事会でのことでした。青山学院高等部の正門の向かい側にあった小さなフランス料理店で、ピーコさんのグラスに私が白ワインをお注ぎしたときにピーコさんから放たれた”お説教“です。
おすぎとピーコさんに初めて会ったのは私が22歳のとき。新卒で就いたTBSラジオのキャスタードライバー時代で、その当時も、ピーコさんにはたくさんたくさん叱られました。
“外回り”担当の私たちのちょっとしたことをいつも見てくださっているのです。たとえば外から入れたレポートについて「あれはわかりにくかった」から「もっと真剣にとりかからないと」まで。一度、ピーコさんが「アンタたち、このままじゃ終わっちゃうよ」とキャスタードライバーだけを集めて、お話をしてくださったこともありました。
でも、それらはすべて“愛あるお説教”で、その一言で、おしまい。「前から思ってたんだけど」とか「アンタは、いつもそう」という“おまけ”はなくて、ピーコさんが都度、気づいたことをすぐに、過不足なく口にしてくださるのです。
でも、ピーコさんから言われたことはいつも私の心にストンと落ちて、そのすべては人生のトリセツのように残っているのです。もちろん私はあれ以来、自分のグラスにさえワインをなみなみと注ぐことはしなくなりました。