「今だからこそ聴きたい、裕次郎ソング」その2

『嵐を呼ぶ男/鷲と鷹』のジャケット
(提供:テイチクエンタテインメント)

■M4 『嵐を呼ぶ男』(唄うドラマー) 日活『嵐を呼ぶ男』主題歌

作詞・井上梅次 作曲・大森盛太郎 編曲・河辺公一
演奏・白木秀雄とオールスターズ
1958年1月リリース

空前の石原裕次郎ブームの引き金となった、井上梅次監督『嵐を呼ぶ男』(1957年12月28日)主題歌。劇中の重要なシーンで歌われた挿入歌『唄うドラマー』のレコード化を日活がテイチクへ持ちかけたところ「劇中歌のレコード化は…」と難色を示し、ならばと日活宣伝部がフォノシートを作成。映画館で販売したところ、爆発的な売り上げを記録。そこでテイチクでは急遽、1月9日にレコーディング。そこで曲名が正式に『嵐を呼ぶ男』と改められました。ちなみにB面はやはり映画公開時にシングル化が見送られていた『鷲と鷹』の主題歌『海の男は行く』。このシングルは、5日間で8万5,000枚が売れたそうです。ちなみに参加メンバーは、ドラム・白木秀雄、ベース・栗田八郎、ピアノ・世良譲、トランペット・福原彰、テナーサックス・芦田ヤスシ、トロンボーン・河辺公一。戦後、ジャズ・ブームを牽引してきたオールスター・プレイヤーがバッキングを担当しています。

■M5 『錆びたナイフ』 日活『錆びたナイフ』主題歌

作詞・萩原四朗 作曲・上原賢六 編曲・福島正二
1957年8月リリース

『錆びたナイフ』も最初は映画主題歌ではなく、1957(昭和32)年8月にレコードが発売され、翌1958(昭和33)年3月11日封切の舛田利雄監督が、この曲を主題歌に映画を作りました。『嵐を呼ぶ男』(井上梅次)、『夜の牙』(同)と立て続けに裕次郎映画が大ヒット。前年から制作が進められていた田坂具隆監督『陽のあたる坂道』の制作が遅れて、映画館主たちから「とにかく裕次郎映画を」というリクエストに応えて急遽企画されたのがこの作品です。日活アクションの重要な要素となる「過去を克服するために現在を戦うヒーローのアイデンティティの回復」がモチーフとなり大ヒットしました。

■M6 『なつかしき思い出/IT S BEEN A LONG LONG TIME』  

作曲・ジュール・スタイン 作詞・サミー・カーン
1959年11月リリース

ジャズ・トランペッターでシンガーのチェット・ベイカーに憧れ、その歌唱法を意識していた裕次郎は、洋楽も数多くカヴァー。この『なつかしき思い出』(It's Been A Long, Long Time)は、ジュール・スタインが作曲、サミー・カーンが作詞による1945年に発表されたスタンダードで、第二次世界大戦の終結を受けてレコードは大ヒット。歌詞は、戦争が終わって帰還した配偶者ないしは恋人を迎え入れる立場の観点から書かれている。映画『アベンジャーズ:エンドゲーム』(2019年)では、キャプテン・アメリカと恋人ペギー・カーターのラブテーマとしてエンディングに流れました。裕次郎版は、シャンソンの名曲『枯葉』とカップリングでシングル・リリース。

■M7 『銀座の恋の物語』 日活『銀座の恋の物語』主題歌

デュエット・牧村旬子 作詞・大高ひさを 作曲・編曲・鏑木創
1961年1月リリース

北原三枝との挙式前日、1960(昭和35)年12月1日、裕次郎がテイチクで吹き込んだ、牧村旬子とのデュエット『銀座の恋の物語』は、もともと日活映画『街から街へつむじ風』(1961年)の挿入歌として作られたものです。映画公開直後、裕次郎がスキー事故で骨折、8ヵ月の療養を余儀なくされる。その間にジワジワとヒットして、1962(昭和37)年、蔵原惟繕監督、浅丘ルリ子共演『銀座の恋の物語』として映画化。デュエットソングの定番となり、累計335万枚を超す大ヒットとなり、裕次郎のシングル売上で、堂々の1位を記録しました(2005年調べ)。